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“MONAD LONDON” SPRING/SUMMER 2020 ③

MENS |

 

―美しく不完全な服を作る”スローファッション”レーベル―

イギリスのファッション&ライフスタイルマガジンANOTHER MANより拝借したこのフレーズ、MONAD LONDONを表現するにもっとも相応しいかもしれない。
Central Saint Martins在学中のDaniel Olatunjiは「完璧」への永続的な追求をしていたが、ブランドを設立するにあたり「不完全な観念」に価値を見出した。
古き良き「わびさび」の概念に深く感銘を受けたDanielは「完璧」であることを捨て、「不完全」であることへの美しさを自身のブランドMONAD LONDONを通して体現している。
卓越したテーラリングスキルにクラフトマンシップ宿るテキスタイル。Danielはこの二つの要素をクロスオーバーさせ、新たな価値を生む次世代デザイナーとして名実ともにワールドワイドな存在になりつつあります。

Danielのルーツはアフリカでナイジェリア出身。いまや世界的に注目されているアフリカの様々な民芸品の身近に育った彼だが、それらの価値に気付いたのはCentral Saint Martinsを卒業してからだという。ブランドを設立するにあたっては、とりわけナイジェリア北部の都市・カノに生息するフラニ族の影響が大きい。この部族は綿花を育て、周囲の古材を集積、それらを織機としてリサイクルし、収穫した綿の手織物で生計を立てている。
母国を離れ、都会で「完璧」なファッションを求めた反動で大きなショックを受けたのだろう。
「これらのプロセスを維持することに意義があり、サスティナブルであることは未来に繋がる。」
こう端を発し、スローファッションレーベルの幕が上がった。

これまたカノに纏わるストーリー。
現代では古都と呼ばれるほど歴史の長い都市・カノには「ピット」という染色のための作業場が点在する。古くは裕福さの証であり、富を得るための稼ぎ口であったインディゴ染めの主戦場だ。
MONAD LONDONのHPにアクセスしたことのある方なら一度は目にしていると思うけど、あの無機質な映像こそピットで職人が生地を染色している様子を写したもの。(https://www.monadlondon.com/)
*追記:今は手織りの映像に更新されています

世界中から研究者たちが訪れるというカノのピットの集合体はKofar Mata dye pitsと呼ばれ、Danielはこの地で織られたテキスタイルを使い、ここコファー・マタで1点ごとに時間をかけて染色を行っている。それらをロンドンに持ち帰り、自身のアトリエにて手間暇惜しまずパッチワーク状に仕立てた逸品がNAKAMURA SHORTS。名前からして日本の面影を感じるけど、ルーツは彼の出生にありってところか。

ナチュラルは無染色、インディゴは先の通りで、ブラックはインディゴを更にオーバーダイしてもらった。
生地の調達だけでも相当な手間が掛かっているのに、縫製までもすべてDanielが1パーツずつ手作業で、全体のバランスに注力しながら。
彼のセンスは本物だから、全7ピースともに仕上がりには大満足だった。彼にとっても骨の折れる仕事だったということは想像に難くない。ありがとうDaniel。
あいにくNAKAMURA SHORTSは即完売でしたが、MONAD LONDONのルーツを語る上では避けて通れない逸品でしたのでご紹介させていただきました。
でも安心してください。穿いてますよではなく、このご時世に於いてもDanielのマインドやスタンスは一貫してますから、今後も素晴らしい「着るアートピース」に出会えるはずです。

自身のルーツだけに留まらないMONAD LONDON。Danielのクラフトマンシップはテキスタイルへの飽くなき追及へと繋がる。
手織りのナイジェリアンコットンと並んで象徴的なのがアンティークリネン。柔能く剛を制すじゃないけど、柔らかくザラっとした風合いなりに、そこそこのウェイトのある如何にも質の良い欧州各地のデッドストックリネンをたびたび使ってくる。僕が購入したディナーシャツがまさにそれ。アンティークのフレンチリネン。売れてなくなってしまったけど、McDONNELL OVERALLSはイタリアンリネンだった。軽めのアイテムともなると裁ち切りのディテール満載で不完全さに拍車が掛かる。

古ければ良いって話でもなく、現代のハンドウィーバーのテキスタイルを使うことも。
“Catarina Riccabona / カタリーナ・リッカボナ” はロンドンをベースに活動するテキスタイルデザイナーで、その域は主にインテリア用のワンオフピースであることからファッションテキスタイルとは無縁である。
天然繊維の交織に並々ならぬ拘りをもつ彼女が織り成すテキスタイルはリネンやウール、アルパカなどを巧みにMIXさせ、アンティークと見紛う質感に仕上がるのが特徴。もちろんワンオフであるのが前提だからすべて1点モノに値する。
そんな素晴らしいハンドウィーバーのテキスタイルをDanielが見逃すはずもなく、彼のコレクションにしっかりと使われてた。僕らが目を光らせたのは上記LOOKに登場しているシルク×リネンのテキスタイルを使用したパンツ。とても高すぎてオーダーはしていない。とやかくカタリーナのテキスタイルは非常に興味深いので、とても高価だけどいつか手にしたいと思っている。

意外にもレザーは避けてきたというDaniel。これにはテーラーの背景をもつ彼ならではの悩みがあった。
「革は専門分野と考えていた。僕が普段好んで使うテキスタイルは伸縮できるが、革はそうもいかない。特定の縫い目に対して限りなく正確な縫製でないと。継ぎ目が一致しないとひと目で分かってしまうんだ。」

CARTER WORK JACKET

いやいや、めちゃくちゃ綺麗やないかーい。って心の中で突っ込んだ。
よくあるワークジャケットを再解釈して作りましたってやつの最上位互換と言ってしまっていい。
触れなくとも分かる上質以外の何者でもないヌバックレザー。本体部のライニングはコットン。袖裏は滑りを良くするためにヴィスコース。まずこれだけでも及第点を遥かに超えている。
特筆すべきは作りの方でしょう。

これらのディテールがDanielの真骨頂。ショルダーとウエストに注目。
「ショルダーラインを落とす」「ウエストにダーツを入れる」 テーラードの仕立てですよ。
ワークジャケットと謳いながらも男性の見た目の美しさを狙った作りということが伺えるわけ。
ダーツの用途は分かりやすいけど、ショルダーラインを落とす行為は = 肩の縫製を正面から見せないということ。サヴィル・ロウな考え方でしょ。
革だけに角張るけどドロップショルダー気味なパターンが如何にもMONAD LONDONらしくて良い。
YKKのダブルジッパーを使ってくるあたりが憎めないやつ!!

仕立屋がレザーでワークジャケットを作ってみた。そんな副題レベルではない傑作は、世界でこの1着しか存在しない。
誰も買わないなら僕が逝きます。

FINK BUCKET HAT

KASPER & SOL BUCKET HAT

ハット各種はそれぞれ1点ずつのストック。
NAKAMURA SHORTSと同製法のFINK BUCKET HAT。
アンティークリネンを使用したKASPER BUCKET HAT。
それを更にハンドディップでオーバーダイしたSOL BUCKET HAT。

DAVIES OVERCOAT

LAYAMON BLAZER

BARKER PANT

昨年のAWで仕入れたこの辺もストックしてます。
こんなこと言いたくないけどSALEはしないので、1年越しに気分が廻ってきた方に是非手にして欲しい。

お察しの通り、今季のMONAD LONDONはレザーとハット以外すべてSOLDとなりました。

普段なら「素晴らしい」なんてワードを連呼することはないけれど、こればかりは。
ということで、素晴らしいプロダクトです。今後もしっかりとリレーションシップを取り合いながら展開していきたいと思っておりますので、ここらでMONAD LONDONへの理解をさらに深めておいてください。
すっかり長くなってしまったので、今回はこの辺で。
AWのデリバリーは気長に待ちましょう。何せスローですから。

通信販売をご希望の方は写真をお送り致しますので、下記よりお気軽にお問い合わせください。

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✉:shop@maiden.jp

MAIDENS SHOP 田中

2020/08/22

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